キミのとなり。
ひどいよっバカ仁!!


ヤキモチ妬いて何が悪いの!?


なんでもっと優しい声をかけてくれないの!?


ぐしゃぐしゃの顔でパジャマに着替え、ベッドに潜り込んだ。



目をつむるとまた蘇ってくるキスシーン……。



私が、バカなの?


一々こんな事で妬いてる私がバカなの?



でも、仕事だとわかってても蘇ってくるんだ、過去が……。



弘人に浮気された過去が。


見てもいないのに二人のキスを思い浮かべては泣いていたあの頃を。


忘れたくても、人に裏切られる恐怖だけは体が覚えてしまっている。



臆病で成長のない自分が嫌い。



それから、一時間ぐらい経った頃だろうか。



寝室のドアが開く音がして、ベッドの上でまだ眠れずにいた私は咄嗟に目を閉じた。


仁はそっと私の背後に近寄り、腰を下ろす。



「…なぁ。」


低いトーンで仁がささやいた。



「……。」



「言っておくけどあれは、不可抗力に近い。佐田さんや監督から頼まれて……。」


わかってる、仕事だって。


「内緒にしてたのは悪かった。」



「……。」



「お前が嫌ならもう受けない。」


え?


「あぁいう仕事は今後一切受けない。」



仁は、おこちゃまな私のわがままを受け入れてそう言ってくれた。


その言葉に、仁の強い気持ちを感じ事ができた。



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