キミのとなり。
どうしたんだろ。
急用だといけないと思い給湯室に走り込み、リダイヤルを押す。


“プルルップルルルップルルル…”


“ガチャッ“


「もしもし仁?」


『……』


電話の向こうで仁は何も言葉を発しない。


もう一度問い掛けてみる。


「もしもし?どしたの?」

『……。』


やっぱり答えない。


するとその内、ガチャッと無言のまま電話は切れてしまった。


なっなんだよ一体!


かけてきといて無言で切るってどうなのよ!


「はぁ~。」


溜め息をつきながら給湯室を出ようとした時、出口の所に誰かがいるのに気付いた。


桜井君だ。


ひぃぃっ!


「仁って……だれ?」


げっ!聞かれたっ!?


「べっ別に。」


なんで私この子に気遣ってんだろ……。


「ってか、立ち聞きしないでよ~趣味悪いよぉ?」


私がへらへらごまかしている間も真面目な顔でこっちを見ている。


「あっそろそろお昼だよ!食堂行こ~っと。」


そういってその場を去ろうとした私に桜井君は再び話し掛けた。


「彼氏?」


ドキッ!


鋭い指摘に足を止めた。


彼はゆっくり私の前に回り込む。


「おんの?彼氏。」


「……。」


「なんで隠すん?」


「別に、隠してない。」


うつむいたままそう答えた。


桜井君は、ズボンのポケットに両手を突っ込んだまま壁にもたれ掛かった。


「なーんや、おるんや・・・男。」


「・・・。」


「おらんと予想してたのに。」


「勝手にっ、よっ予想しないでくれるかな!?」


汗ばむ手で携帯を握りしめながら、ちょっときつめの口調でそう言った。


「そっそれに、聞かなかったでしょ!?一度も……。」


そのままの態勢で今度はゆっくり天上に目をやる。


「まぁ、確かに。」


やけに素直な彼。


その後ずっと天上を見たまま無言になった。


< 242 / 554 >

この作品をシェア

pagetop