キミのとなり。
私にはそれが、涙が零れ落ちないようにしているみたいに見えて……。


その姿がなんだかちょっとかわいそうに思えたけど、変な気を持たせちゃいけないとわざと冷たく接した。


「私、戻るね。」


「……。」


天上を見上げる桜井君を置いて私は歩き出した。


そして5、6歩程歩いた時だった。


桜井君が私の背中に向かって言葉を発した。


「俺、結構本気やったんやで。」


その言葉に立ち止まる。


「赤い糸やと思ったんやで。」


怖くて振り返れなかった。彼がどんな顔で声を震わせそう言ってくれているのか……考えただけで怖かったから。


“コツコツコツ…”と背後から近づく足音。


それは私の背中でゆっくり止まる。


「期待させるような事、すんなや。」


物凄い低いトーンでそう言うと、そのまま私の前を通り過ぎて行った。


背筋がゾクッとした。


いっいやいやいや、っていうか、ハァ!?


なんなの!?


確かに、彼氏がいるって言うタイミングはあったかもしれないけど。


それを言わなかったのは悪かったけど、なんで!?


勝手に期待してたのはそっちだし!


ってか、期待なんかさせるつもりこれっぽっちもなかったし!!


……でも、もしかするとそれだけ本気で見ていてくれたのかも。


彼が私に好意を示している事は確かにわかってた訳だし、それとなく彼氏がいるっぽい事は言っておくべきだったよね。


ちょっと反省……。





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