キミのとなり。
上を見上げると目に入る数々の看板。


ヒラヒラと揺れるカーテンのような駐車場の入口。


あれ……?


ここはもしや。


そう、昼下がりのラブホテル街だった。


ホテルの入口から仲良く肩を組んで出てくるカップル。


思わず目を反らした。


なっなんでこんなとこ曲がるのよ!!


私が俯いているとやっと桜井君が口を開いた。


「俺がここに入ってもついてくる気?」


「はっはぁ!?」


そう言ってゆっくり振り返る。


何故か黙って私を見つめた後、真横に建つバカでかいラブホテルを見上げる。


そしてまた目線を私に戻しこう言った。


「せっかくやし入る?」


「なっ!何言ってんの!」


私は耐え兼ねて、元来た道を逆戻りしだした。


「冗談やん、冗談!」


そう言って今度は彼が私を追う。


「最低~!」


「つぅか、なんか言いたいことあったんと違うん?あんなとこまで追い掛けておいてなんも言わずに戻るん?」


「だっだって!今のは予想外っ……」


ん??


後ろを見ると何故か勝ち誇った顔の桜井君がいた。


「ほらぁ!俺の今の行動も予想外やったやろ??」


「え?」


「もし俺が“今からホテル街に行きます!”って言っとったらついて来うへんかったやろ!?」


うぅっ……。


「俺ももし、先輩に“恋人がいる”って最初に聞かされてたらここまでの気持ちにはなってなかったはず。」


返す言葉が見つからない。


「何事も口でちゃんと言わないと相手には伝わらへん。って事でしょ!?」


そっそれとこれとはっ…。


「よし、ランチ行こ!」


そう言うと私の腕を引っ張って歩き出した。


えっ…えっ!?


今の流れからなんでそうなるんだよ!


困惑気味の私に構わず、桜井君は真っ直ぐ前だけを見ている。


「えっやっ…ダメだって!」


「飯ぐらいええやん、ホテル行こって言ってるんちゃうんやから。」


「あっ当たり前だぁ!!」


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