キミのとなり。
顔を真っ赤にして席につく。


なんか、振り回されてる感があるな・・・。


「ほんまに好きなんやな。」


ボソッとそう呟いた。


「……。」


「デスクにブロマイドまで隠し持ってたし。」



「なっなんでそれをっ!?」


「この前ちょっと借りたいものがあって先輩のデスク開けたら見つけて。」


げっ……そこまで考えてなかった。不覚!!


「もしかしてさっきの電話の仁ってマイクロシティのジンやったりしてなぁ!ハハハハッ。」


“ズズズズーッ”


そう言ってニッとはにかんだ後、ストローで勢いよくアイスコーヒーを吸い上げた。


えっ……今のも冗談?


「……。」


私は固まったまま彼の次の反応を待っている。


冗談っすよ!ってなるのを待っている。


だけど、アイスコーヒーを飲み終えると桜井君は急に立ち上がりテーブルにあった伝票を取り上げこう私に言った。


「まぁー彼氏がおったのは計算外やったけど……。」


けっ計算!?


「それでも俺は諦めませんよ!」


はい?


「例え相手がジンやったとしても……。いやっ…てか、その方が張り合いがあるかもなっ!?うん!!」


何を一人でボソボソと……。


っていうか、この子は本気で言ってんのかな……それとも、馬鹿にしてる?


「そんじゃ、俺先行きますね!」


「えっ?会社戻らないの!?」


去っていく背中にそう聞いた。


桜井君は振り返り、緩んだネクタイをもう一度キュッと締め直すと一言こう言った。


「これから外回りなんで!」


軽く手を振り店を出る桜井君。


なんだかさっきより少しだけ成長したかのように見えた。


でも、さっきまであんなに落ちてたのに立ち直るのが早いっ。


若いって…いいなぁー。



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