キミのとなり。
それでもなんとか出勤の準備をして会社へ向かった。


昼休み――



弘人に呼び出され屋上へ向かう。


先に来ていた弘人が私に気付き「よっ!」と軽く手を上げた。


二人でベンチに座りサンドイッチを頬張る。


すると、早速弘人が口を開いた。


「で、昨日の続きは?」


「なんだっけ……。」


「何って!新人君だろ新人君!」


今朝の事で頭がいっぱいですっかり忘れていた。


「あぁ、桜井君ね。」


「桜井っていうのかあいつ。」


ズズーッ


生暖かい風に吹かれながら牛乳を飲み干す。


「その桜井に何言われたの?好きですっ……とか?」


ぶるぶると首を振る。


「じゃー“付き合ってくれ!”…とか?」


またぶるぶると首を横に振った。


私の横でガクッと肩を落とす弘人。


「じゃー何言われたんだよ。つうか千秋の思い込みなんじゃねえのか?」


「……うん。」


「はぁ?」


明らかに上の空の私の顔を横から覗き込む。


「……。」


「……。」


「瞬きぐらいしろ!」


パッと我に返る。


「あぁっごめん、何だっけ?」


「だからぁ…」


「……。」


「もぉいいや!どっちみちお前にはまったくその気ないみたいだから。安心した。ってか…当然か!千秋には仁がいるんだもんな。」


次の瞬間、突風で膝のうえに置いていたハンカチが飛ばされた。


私はただヒラヒラと風に乗って飛んで行くハンカチを見ていた。


まるで仁が自分から離れて行く姿を見ているみたいで……。


信じようと思うのに、どうしてだろう。


先走った想像ばかりが私の頭を混乱させる。


< 252 / 554 >

この作品をシェア

pagetop