キミのとなり。
午前11時発――グアム行き


私たちは飛行機に乗り込みグアムへ出発した。


約3時間程の空の旅を楽しんだ後、飛行機はグアムへ降り立った。


いつの間にか、晃の腕の中で生まれて始めての飛行機に疲れたのか、睦月ちゃんは眠ってしまっていた。


「寝顔、天使だね。」


私がそう言うと、晃は本当に愛おしそうに目を細め睦月ちゃんを見ていた。


「ここからタクシー拾うから。」


外に出ると仁がそう言って手を上げタクシーを拾ってくれた。


黒人の運転手に向かって何やら悠長な英語で話し掛けタクシーのトランクが開き段取りよく仁は私たちの手荷物を積み込んだ。


さすが海外で生活していただけあって頼りになる。


また少し好きになった。


仁が目的地を告げるとタクシーは走り出した。


数十分程走った後タクシーは停車した。


「Thank you!」


仁はそう言って運転手にタクシー料金を払うと、さりげなくチップも一緒に手渡した。


なぁるほど!勉強になるな~。


私が感心している間に後ろのトランクが開き仁が荷物を取り出す。


私たちもそれを手伝った。

タクシーの中で目を覚ました睦月ちゃんがまだ眠いのかぐずり出し晶子に抱っこをせがんでいる。


「睦月、今は抱っこできないの!ほら、みんなお荷物持ってるでしょ!」


トランクから荷物を出しながら晶子がそう睦月ちゃんをなだめた。


それでも睦月ちゃんは泣きじゃくり晶子の足から離れない。


それを見ていた仁がたまり兼ねて口を開いた。


「抱いてやれよ。荷物はいいから。」


「あっいいんです、甘えてるだけだから。」



晶子は母親の口調でそう言った。


すると仁は晶子が手にした荷物を持ってこう言った。


「だったら、なおさら抱いてやれよ。」


「えっでも。」


「マジで、いいから。」


「あっ……ごめんなさい、ありがとう。」


たまの休みで身体も疲れているはずなのに、まったく人にそんな気遣いをさせないばかりか、逆に周りに気を利かせられる仁を遠目で見ていて、素敵だなって思った。





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