キミのとなり。
「なぁにニヤニヤしてんだよ!」


晃がバシッと私の背中を叩いた。


「しっ…してないしっ!」


「お前いちいちわかりやすいんだよ!まぁ……千秋は仁さんにゾッコンラブだから!?仕方ねえけど。」


「べっ別にそんなんじゃ……ないっ…よ。」


明らかに無理をした言い方をした。


「っとかなんとか言ってぇ~!お前これ逃したら次ないよ!?」


「わっわわ私だって!!言い寄ってくる男の一人や二人……っ。」


あっ……。


ムキになって晃の挑発にのってしまった。


冷めた目でビールを飲みながら私を見る仁。


「またまたぁ~強がって!いいじゃん、お前仁さんと付き合えるなんて“アラブの石油王に見初められて玉の輿に乗る”ぐらい奇跡に近いぜ!?」


わかりにくいよ…


でも、なんか悔しい!!
なんか明らかに仁が上で私が下みたいな言われ方。


仁だって同じくらい私の事想ってくれてるはずなのに、私ばっかり好きみたいで。


おまけに当の本人は涼しい顔でビール飲んで何も言わないし。


なんだかどんどん仁が輝いていって私じゃ不釣り合いに思われてるみたい。


散々言いたいことを撒き散らして、結局毎度の事ながら酔い潰れた晃は一人別室のベッドの上で大いびきをかいて眠りについていた。


外で片付けを進めるうち、睦月ちゃんも眠そうに目をこすりぐずりだした。


「あっここはいいから、部屋で寝かせてあげて!」


私がそう言うと晶子は申し訳なさそうに睦月ちゃんを抱き上げ部屋へ入った。


薄暗い浜辺の片隅で私と仁は黙々と後片付けをする。


さっきの対応が不満だった私は、不自然な程仁と目を合わせなかった。



その内、仁が静かに口を開いた。


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