キミのとなり。
――深夜2時


窓から差し込む月明かりに目を覚ました。


少し寝ぼけ眼で部屋を見渡す。


見慣れない光景に一瞬戸惑う。


あぁ、そっか。
グアムにいるんだった。


少しづつ鮮明になる記憶。


あっ仁……


私はそこにあるはずの背中を探した。


仁はそこにいなかった。


あれ……。


慌てて部屋を見渡すが姿を見つけることはできなかった。


なんとなく窓の外に目をやると、浜辺に座り込む仁を見つけることができた。


少し肌寒い夜の海へ、サンダル片手に飛び出した。


波の音しかしないその場所はまるで別世界だった。


「眠れないの?」


そう言って仁の横に腰掛けた。


仁は少し驚いた顔で私を見上げると、優しく微笑みまた海へ目をやる。


笑ってくれて少しホッとした。


仁はただ黙って薄暗い空にぽかんと浮かぶ月を見ていた。


「何考えてる?」


私がそう聞くと、仁は少し間をおいて静かに口を開いた。



「……何も。」



「えぇ?」



「何も考えない時間って、最近なかったなーと思って。」


「……。」


「いっつも仕事の事とか頭ん中詰め込み過ぎて……こういう何でもない時間持ててなかったなって思ったんだ。」


「……仕方ないよ。毎日忙しいんだもん。」


人差し指で砂をいじりながら、仁の話しに耳を傾ける。


「寂しいもんだな。」


「ん?」


「人間ってこういう何でもない時間があると、色んな事勝手に考えたり想像したりするんだな。」


真っ直ぐ月を見たまま、少し弱気な口調でそう言う仁。


私は思わず質問した。


「……何を想像したの?」


「……。」


仁は急に黙りこくる。


「っま、いいや。」


そう言ってまた砂をいじる私。


本当は【お前の事だよ】っなんて言ってくれるのを期待していた自分が恥ずかしい。



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