キミのとなり。
『くしゅんっ!』


昼間と夜の気温差が激しいせいか少し寒気がした。


「大丈夫か?中入るか?」


「やだっ!せっかくこんないい雰囲気の場所にいるんだもん。日本帰ったらもう滅多にこんな時間過ごせないんだから!」


仁は力説する私を見て、また少し微笑み納得した様子を見せた。


二人の間に、波の音が静かにこだまする。


「俺さ、今まで嫉妬とか束縛とか面倒臭せぇって思ってたんだけど」


「ん?」


「仕方ねぇ事なんだな。」


「え?どういう意味?」


月明かりに照らされた仁の横顔に問い掛ける。


「当たり前な事……だったんだなーと思って。」



「当たり前?」



「だって、あれだろ?その人が好きだから嫉妬もするしその人が好きだから縛りたくなる……」


仁らしからぬ発言に驚いた。


「どうしたのっ一体!?」


「…ってのを、今ここで考えてた。」


はぁ。



「……。」


よく……わからないけど、喜んでいいの…かな?



「……で?」


「……でって?」



仁は横にいる私に顔を向けた。


「誰に言い寄られたんだ?」


え?


「……。」


「……。」



長い沈黙の間も、波の押し寄せては引き環えす音が二人を包む。


えっもしかして、さっき言ったこと気にしてくれてたの!?


仁はただ黙って私の答えを待っている。


何、妬いてる?



仁が嫉妬してる!?



そう考えたら、すごく幸せな気分が湧きでてきた。


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