キミのとなり。
どうして?


【仁いる?】


えっ……


【そこに仁……いる?】


電話の向こうでその女性が仁を呼んだ。


心臓が破裂するかと思った。


「……。」



電話を持ちながら何も話さない私を晶子が不思議に思い声をかける。



「ん?どした??」


「……。」


体が固まって動くことができない。


「千秋?」


「……。」


ピッ…


私は震える指で電話を切った。


「晃たちどこだって?」


「……。」


さっきの女の声がまだ耳に残っている。


「ねぇ!」


ハッ…



「ごっごめん。」



「一体どおしっ……」



『おっいたいた!』


晶子が私の肩に手をかけようとした時、正面から晃の声がした。



「なんだ、いるじゃん!」


晶子もそう言って晃たちに近づいて行く。


晃の後ろからズボンのポケットに手を突っ込んだままゆっくり仁が歩いてくるのが見えた。



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