キミのとなり。
どういう事なの?


仁はちゃんとここにいる。


なのに、携帯には女が出た。


「探したんだぞ!?」


「こっちのセリフよぉ。……で、何買った?」



「コラっ勝手に見るな!」


盛り上がる二人の横で、仁は少し離れた場所にいた私にちらっと目をやる。



思わず下を向いた。



仁はゆっくり近づいて来た。


どうしよう……泣きそう。


「どした?」


仁は私の顔を覗き込んでそう聞いた。


「……なんでもないよ。」


そう言って目を反らす私を何かおかしいと感づいたような顔で仁は見ていた。


「あっねぇ!じゃーついでだしココ入っちゃう!?」


晃が指差した先には、小さな水族館があった。


睦月ちゃんも大喜びで晶子の手を引っ張りながら、晃の後を追い掛ける。


私と仁もただ黙って後に続いた。



私たちの前で楽しそうに過ごす晃たち。


自然と私の歩く速度は遅まる。


さっきの声……間違いなく前に電話に出た女だった。


でもどうして仁の携帯を?


2、3歩先を歩いていた仁がちらっと私の方を振り返る。


「おい、早くこいよ。」


ドキッ…


「うん。」


どうしても仁と目が合わせられない。


「ねぇ、仁。」


「あ?」


怖かったけど、無意識に聞こうとする自分がいた。


「今、何時だろうね。携帯、……ある?」


「あぁーそれが、何日か前に無くしちまって。たぶん事務所に置いたままだと思う。」


ズキッ……


疑惑が確信へ変わろうとしている。





< 277 / 554 >

この作品をシェア

pagetop