キミのとなり。

たまたまそこに居合わせた二人組の日本人女性がジンに気がつき近づいて来た。


仁は一瞬面倒臭そうな顔をしたが、すぐに手を伸ばすその女性二人に向けて優しく微笑んだ。


『大ファンなんです～！握手してください！』


「どうも……」


仁は少々引きつり気味の顔で手を伸ばし一人一人と両手でしっかり握手した。


『旅行ですかぁ～？』


「まぁ……。」



『私たちもなんですぅ～！こんな所で会えるなんて超ラッキー！！』


「……あぁ、もう時間だから。」


仁は私に目で合図すると席を立ち、笑顔で彼女たちに手を振り店を出た。


慌てて後に続く。


背後で彼女たちの話す声がする。


『超かっこいいじゃーん！』


『あー写メ撮ってもらえばよかったぁ！』


『まだ間に合うよ！行こ！』


そう聞こえた時だった。


仁は少し後ろを歩く私の手を、強く引っ張り走り出した。


「わっ……ちょっ！」


人込みを擦り抜け走った。


「お前、もっと早く走れよ！」


「せっ、精一杯走ってるよ！」


足を止めてキョロキョロ辺りを見渡し、人目につきにくいスペースを見つけて隠れた。