キミのとなり。
見えない真実
翌朝――


まだ疲れが取れないままで出勤。


「小原先輩!」


エレベーターの前で桜井君が話し掛けて来た。


「…あっおはよ。」


「“有給休暇”とってたんですね~!」



「うん……まぁ。」



「3日も先輩いてへんから寂しかったっす~!」


そう言っていたずらな笑顔を見せる。


なんでだろう……。


なんだか随分久しぶりに見たような気がしてホッとした。



あっそうだ。


鞄から紙袋を出して桜井君に手渡す。


「はい。」


「……え?なんすか?」


「お土産。グアムの……」


「えっグアム行ってたんすか~!?」


「うん。」



私の横で紙袋を大事そうに開ける桜井くん。


「うぉ~!かっこいい!」


私が彼に選んだのはサーフボードをあしらったシルバーのネックレス。


「……そんな感動してもらえる程のもんじゃないよ。」


安物でそこまで大袈裟に反応されると選んだこっちが恥ずかしい…。


「いやー感動っすよ!先輩が仕事以外の日に、俺の事思い出してくれる瞬間があったって事に感動っすよ!」


ドキッ……


屈託のない笑顔。


嬉しそうに何度も何度も光にかざして眺めている。



なんか私、この子に癒されてるのかも。


オフィスに入り、いつものようにパソコンを開き仕事に取り掛かる。


手を動かそうとすると思い出す昨日の電話の声。


まるでトンネルの中にいるみたいに頭で何度も響いている。


帰ってからも何一つ確認できないままだった。


『新着メール受信』


パソコンの画面にそう表示され、慌ててメールを開く。


“from:桜井”


ん?


メールは桜井君からだった。


思わず正面に目をやる。


にんまり微笑む桜井君。


真面目に仕事しているように見せ掛けて何をやってるんだか…。


“カチ”


そう思いつつメールを読む。


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