キミのとなり。
げっ……


そこはまさに男の一人暮し、といった感じだった。


足元には脱ぎ散らかした服の数々、読み掛けの雑誌が散乱し、キッチンは何日も溜め込まれた洗い物が山になっていた。


桜井君は足でそれらを蹴飛ばしながら中へ入る。


「そんなとこに突っ立ってないで入ってくださいよ。」


「……想像以上。」



「これでもまだ片付いてる方っすよ!?」


「えっ…冗談でしょ!?」


「男一人だとこうなりますよ!」


「……まぁ、イメージ通り、ではあるけどね。」


キョロキョロと部屋を物色しながら奥へ進む。


6畳程のキッチンを抜けると、8畳ほどのリビングがあった。


ベッドにテレビ、ガラスのテーブル……


本当に最小限のものしか置いていない、シンプルな部屋だった。


「まぁ、適当に座ってください。」


……座る場所さえないんだけど。


バタバタと落ち着かない桜井君をよそに、一人ぽつんとテーブルの前に座り込む。


すると「はい!」と彼がタオルを手渡してくれた。



「ありがとう。」



タオルを受け取り、とりあえず髪を拭いた。



ん……?


タオルからいい匂いがする。


なんだ……意外と柔軟剤とかまめに使ってるんだ。



部屋は汚いけど……。



「あ、ドライヤー使います?あとぉ……」


何やらタンスを開けて中の服を乱雑にあさりだす。


「あったあった!!はいコレ!」


桜井君は、私に黒いジャージを差し出した。


「とりあえずそれに着替えて服乾かしたほうがいいですよ。」



「いっいいよ!」


「いいからいいから!俺のやからデカイと思うけど、……それとも、裸でおる?」


「バッバカ!変態!!」


「冗談やん冗談!はよ、着替えてください。服干しとくから。」


私は仕方なく脱衣所に移り、桜井君に貸してもらったジャージに着替えてドライヤーで髪を乾かした。






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