キミのとなり。
「唐突に聞くけど、二人はどこで出会ったん?」



「……前に住んでたマンションが隣り同士だったんだ。」



「えっ!?」



「あっもちろん出会った時はまだデビュー前だったんだけど。」


「あっそっか……。」


「ちょうど、デビューが決まった頃から付き合うようになって。」


「ふぅん。」


私なんで桜井君の前で過去を振り返ってんだろ。



「……思った以上に向こうが忙しくなっていって、すれ違うようになって、事務所からも反対されて……一度は別れたんだよ、実は。」


「えぇ?」


「一年ぐらい離れてる時期があって……でも、また再会して。それで一緒に暮らすようになったんだ。」


“ブッ!!”


「ゲホッゲホゲホッ!」



それを聞いた桜井君がいきなりむせ込んだ。


「どっどしたの!?」



「えっ、ちょっと待って……一緒に暮らしてる!?」


あっ……


フライングし過ぎた。


そうか、同棲している事、話してなかったな。



「なっ内緒ね!」


いつものくせでそう言ったけど、


もう……隠す必要もなくなるかもしれないんだな。



そう思ったらまた涙が出て来た。


目の前に置かれた缶ビールに手を伸ばす。


「いただいて、いい!?」


「……どぞ。」



ググッと一気に飲み干した。


「プハーッ!おいしい!」


「……だっ大丈夫すか?」


「……芸能人だし、浮気の一つや二つ当たり前なのかもしれないけど、」



「……。」



“ポタッ”


無意識に落ちてくる涙を必死で拭った。



「……私は、無理。」


桜井君は黙って話しを聞いていた。



「……一生無理。」


ググッとまた一気にビールを流し込んだ。



「務まんないね、嫉妬深い女に仁の彼女は……。」



するとさっきまで黙っていた桜井君が口を開いた。



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