キミのとなり。
《ミャ~!》



“カリカリカリ…”



そこにいたのは、小さな猫だった。



「なっ、なんでこんなとこに猫が…」



言いかけて気付いた。



もしや、隣りの!?



でっでも、なんで……?



「キャーかぁわいい~。」



恐ろしい音の正体が子猫だとわかると、若菜ちゃんは私を押し退けその子猫を胸に抱き寄せる。



おっおい!



一応私、先輩なんだけどっ!?


そんな先輩の心の叫びにも気付かず、彼女はその子猫を部屋に上げあやし始めた。


おそらく子猫は、仁の部屋から私の部屋までベランダの手摺りを伝ってきたんだろう。



若菜ちゃんがひらめいた様に言う。



「あっでもこれで会えますね!」



えっ?



子猫を高い高いして、大喜びの若菜ちゃん。



「お前のご主人様はどんな人なの!?かっこいい!?背高い?」



猫に聞いてどうする……。


「お金持ってるっ!?」



《ニャン?》



そりゃ、猫もそんな反応だわ。



夕飯を食べている私達のそばで、子猫は元気に部屋を走り回っている。



子猫を撫でながら、若菜ちゃんが呟いた。



「ご主人様遅いね~。」



言われてみれば、仁は毎晩帰りが遅い。



一体何の仕事をしてるんだろう……。


そして時計が11時になる頃――



“キーッガチャン”



隣りでドアの開閉する音がした。



「帰ってきた!」



半分眠りかけていた若菜ちゃんのテンションが一気に上がる。



猫を抱えて興奮気味に立ち上がった。



「行きましょ先輩!早く猫返してあげないと!」



自分が会いたいだけでしょうが……。



仕方なく子猫を返しに隣りに向かった。



< 30 / 554 >

この作品をシェア

pagetop