キミのとなり。
「……なっなんでそんな事」



「なんで?決まってるじゃない、あなた達に別れてもらう為よ。おまけに、さくらと噂になればジン、あなたの名前は今よりもっと世に知れ渡るのよ?」



「“売名行為”だった……っていうのか。」



私の隣で、仁の握りこぶしが小刻みに震えているのが見えた。


「人聞きの悪いこと言わないでよ、これはビジネスよ。」


「ビジネス!?」



「事務所に勤める人間が所属タレントを売れさせたい……そう思うのは当たり前の事だわ。」



「だからってこんな卑怯なっ……」


「それに、これは警告よ!」


警告……?


「仁、あなた今日の仕事はどうしたの?」


「……。」



突然黙り込む仁。


「今日は確かコンサートのリハーサルがあったわよね?」



えっ!?


「……。」


「それをこんな子一人を捜す為に無断で休むなんて!」


えっ…



「悪かったと思ってる。」


「悪かったじゃ済まされない立場にいる事わかってるの!?あなたがいない事でどれだけの人に迷惑がかかってるか…」



「わかってる!もう……しない。」



「……ジン、あなた最近メンバーともうまくいってないわよね?」



え……


何もかもが初めて聞かされた事実だった。



「ケンが言ってたわ。ジンは仕事中も彼女の事考えて上の空だって……仕事に身が入ってないってみんな思ってるのよ!?」


そんなっ……



仁は俯いたまま黙っている。


「他のメンバーだって恋愛したいに決まってるじゃない!だけど、今はそんな時じゃないってみんなちゃんと自覚してるのよ!?」



悔しそうに唇を噛み締める仁。


「千秋さん。」



突然、佐田さんが私に話しを振った。



< 303 / 554 >

この作品をシェア

pagetop