キミのとなり。
「前に言ったわよね?“ジンと付き合うっていう事はジンのアーティスト生命も半分受け持つって事だ”って。」



私は小さく頷いた。



「あなたがジンのそばにいる事でジンはたくさんのものを失うかもしれない。」


えっ・・・


「止めてくれ!」


仁の怒鳴り声が事務所に響いた。



仁は涙を流す私の手を、力いっぱい引っ張り上げた。


私の体は力無く立ち上がる。


「とにかく、俺たちは別れるつもりはねぇから。」



そう言い残し、事務所を出た。



仁は繋いだ手を決して離そうとはしなかった。


来た道を戻って行く。



「ったく、なんだあれ。」


仁の怒りに震える背中を追い掛けて歩いた。



次第に足がゆっくりになり、そのうちピタッと足を止めた仁が私の顔を覗き込む。


「あんなの気にすんな?なっ。」



「……。」


「佐田さんは自分の事しか考えてない。あんなのただの押し付けだ。」



仁はまた歩きだす。



「……本当にそうかな。」


「ん?」



「あの人の言ってる事は、間違ってはいないよね。」


「あ?」


「だって、仁の仕事は色んな人の助けがあってこそ成り立ってるんだし、確かにこんな風に仕事を休んだり自分の都合で行動すると沢山の人に迷惑をかけるよね。」



「千秋…。」



「私、今まで仁の為に御飯作ったり、洗濯したり……身の回りのお世話をする事で仁の支えになってる気でいたけど、…違ってたのかも。」



仁は向きを変えて、私のそばに歩み寄った。



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