キミのとなり。
「千秋……。」



私は手を伸ばして、震える指で仁のシャツを掴んだ。


「どうしたらいいの……」


「何迷ってんだよ!お前は俺をずっと支えて来てくれたじゃねぇか。」


仁は私の左ひじ辺りをきつく掴んで揺さぶる。


「誰に何言われようと関係ねぇよ。好きだから一緒にいる…それだけだ。」



仁……


私だって気持ちは同じだよ。


周りの事なんか見ない振りして、ずーっと仁といたい。


何言われたって耳を塞いで一緒にいたいと思うよ。



でも……仁は、



仁のいる世界はそんなに甘いものじゃない。



支えてくるファンや、事務所、メンバーがいなければ


簡単に崩れてしまう場所に仁はいる。



もしそうなった時、私はそれでもいいと…


仁と一緒に居られればいんだと、


そんな身勝手な事が言えるだろうか……。



私が仁を好きになったのは、不器用だけどいつも前向きで好きな事に一直線で


夢を持って毎日頑張っていた姿を見たから……



本当に夢が叶った瞬間に立ち会えた時、二人で抱き合って喜んだんだ。



なのに……



私のせいで、


私が一緒にいるせいで、


仁の限りない未来を限りあるものに変えてしまうなんて……


出来ないよ。



やっぱり私は仁の唄っている姿が1番好きだから。


私は仁の胸に身を埋めた。


「ギュッて……して。」


「え?」


「この気持ちが変わらない内に、ちゃんとお別れが言いたいから。……最後にもう一度ギュッて抱きしめて。」


「……。」


「それが、お前の出した答えなのか?」


「……。」


俯いたまま小さくひとつ頷いた。


ずっと身動きすらしなかった仁が、ゆっくり私の背中に手を回す。



そして、力いっぱい自分の方へ引き寄せた。



“ぎゅっ……”


仁はただ黙って私を抱きしめた。


それが、今の仁にとっての私への優しさ・・・。


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