キミのとなり。
“ピンポーン…”



緊張する私をよそに、若菜ちゃんは今か今かとその時を待っている。



しばらくして、ドアがゆっくり開いた。



「あ……こっ」



「こんばんわぁ~!」



私を押し退け、最高の笑顔であいさつする若菜ちゃん。



「……なに。」



仁は一瞬煙たそうな顔をして、またいつもの無愛想な口調で一言そう言った。



「あのぉ、お宅の猫ちゃんが隣りの先輩のベランダに入って来ちゃって~。」



ねちゃねちゃした言い方で体をくねくねさせながら若菜ちゃんがそう言うと、仁は猫を奪うように彼女の腕から取り上げた。


「……えっあ」



“バタンッ”



そして、お礼も言わずドアを閉め、しっかり鍵をかけた。



私の隣で目をパチパチさせている若菜ちゃん。



「ね……感じ悪いでしょ。」


「たっ…確かに。ちょっと引きました。」



放心状態の若菜ちゃんの腕を引っ張って部屋へ戻った。



クローゼットから布団を出して敷いていると、さっきからなんだか考え込んだ様子だった若菜ちゃんが口を開いた。


「でもあの人……、どっかで見た事あるような……」


「え?そうなの!?」



「はっきり思い出せないんですけど……」



ふーん…


世間は狭いもんだ。



「電気消すよー。」



「……。」



若菜ちゃんはまだ考え込んでいる。



“カチッ”



電気を消した瞬間――



「あぁぁぁっ!!」



若菜ちゃんの物凄い声が狭い部屋に響き渡った。



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