キミのとなり。
どないやねん!!
「で……、なんでうちなんですかっ!」」



私の目の前でお風呂上がりの頭にタオルを巻き付けた若菜ちゃんが言う。



「いやっ…だって他に行く宛てが思い付かなくて。それにほらっ!会社一緒だし朝、一緒に出勤できるしさ!」



「……小学生じゃないんですから。」



「あはっ…」



気を遣わずに寝泊まりできる場所っていうと、ここしか思い付かなかった。



「まぁ、別にいいですけど。……ってか、本当に別れちゃったんですか?」



「……うん。」


若菜ちゃんはペディキュアを塗りながら質問を続ける。



「事情はわかりましたけどぉー、でもそんなんで身を引いて後で後悔しません?」


「……それは、後にならないとわかんないけど。」



“フーフーッ”と足の爪に息を吹き掛けつつ横目で私を見る。



「あたしだったら、別れないなぁー。」



「えっ。」


「だって、事務所に何言われようとメンバーとの仲が悪くなろうとそんなの関係ないもん!好きなもんは好きだし、そんなんで諦める事なんて絶対できないっ。」



若菜ちゃんは淡々とそう話す。



「それに、もしそれで相手の仕事がうまくいったとして今よりもっと売れっ子になったとしても、素直に喜べませんよ~。」



え……



「だって、なんかそれこそ事務所の人に“あなたと別れたから成功したんだ”って言われてるみたいだで嫌だし、やっぱり自分の存在が邪魔してたんだってこっちも確認しちゃうようなもんじゃないですかー。」



うん……


確かにね。


なんかもう、どうすればいいのかわかんないよ。



頭を抱えてテーブルにうずくまる。



「先輩……」



考えたって答えなんかでない事ぐらい百も承知だよ。


誰か教えてよ……。



大丈夫、何も間違ってないよって



背中を押して……。



若菜ちゃんに布団を敷いてもらって床に就いた。



布団に入ると色んな事が頭を過ぎる。



その夜は、当たり前だけど涙が止まらなくて結局一睡も出来なかった。








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