キミのとなり。
「今諦めたらもう一生そこでストップだぞ!?」



「……。」



弘人の余りの低いトーンの声に、言葉を詰まらせた。



「お前、なんでわざわざ辛くなる道を選ぶんだよ。」


「……。」



「前に離れてた時、お前言ったよな?」



弘人は真剣な眼差しで話す。



「仁が帰って来ても、自分を好きでいてくれる保障なんてないんだけど、それでも待ってたいって。」



それはいつかここで、私が弘人にキスを迫られた時に口にした言葉だった。



「あんだけ好きで、あんだけの想いがあったから二人は元に戻ったんだろ。」



思わず顔を背けた。



「誰に何か言われたからとか、誰かの為とか……そんな簡単に諦められるもんなのかよ!」



弘人はベンチに座る私の前にしゃがみ込み諭すようにそう言った。



弘人の力強い手が私の左腕を揺さぶる。



「なぁ千秋、」



「……ん?」



温かい手に力が入る。



「もっとわがまま言えよ。」


「えっ…」



「なんでそんないっつも我慢ばっかなんだよ。たまにはさぁ、誰か困らせる位のわがまま言ってみろよ。」


返す言葉も見つからなかった。


自分でも時々嫌になる時がある。



もっと素直に、わがままになれたらって……。



若菜ちゃんみたいに、「そんなの嫌だ!」って、言えたらなって。



でも、考えちゃうんだ。



頭の端っこで色んな余計な事……



考えなくてもいい事まで。


「千秋、」



「……ん?」



「そういう何かを諦める気持ちって持ってなきゃいけない時もあるけどさ、……時には邪魔になる事もあるんだぞ?」



……弘人 。



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