キミのとなり。
その時――



タイミング悪く、マイクロシティーが出演する歌番組が始まった。



若菜ちゃんの動きが止まる……



私も彼女も画面に釘付けになった。



《では、今日最初に歌って頂きますのはマイクロシティーのみなさんです!どうぞ~》



司会者に紹介され、画面が切り替わる。



薄ぐらいステージの中に仁がいた。



ついこの前、別れたところなのにずいぶん久しぶりに見たような気がした。



ライトが点された中に立ちスタンドマイクを握って仁は歌い出す。



ケンちゃんは仁の背後で力強くドラムを叩いている。



仁……



久しぶりに聞いた歌声。



優しい歌声……。



眉間にシワを寄せながら、切なそうに歌う。



あれから仁はどんな気持ちで過ごしているの?



後悔とか……



したりしたの?



私の事思い出して苦しくなったり…切なくなったりしてくれた事ある?



画面の中の答えてなどくれない仁に心の中でそう聞いた。



私の横で若菜ちゃんが画面にへばり付いている。



「ケンちゃん…ケンちゃぁん…」



また涙が溢れ出す。



そっか……



そんなに好きなんだ。



辛いよね。



こんな風に画面越しでしか会えないなんて…



そこにいるのが辛くなって立ち上がろうとしたその時だった。



ん…



私も若菜ちゃんもその出来事に一瞬動きを止めた。


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