キミのとなり。
「ここは、“夢の叶う部屋”なんじゃ。」



「へっ??」



とっ唐突に何言い出すの、このお爺さん……。




「一番最初に入ったのは確か、獣医の卵かなんかじゃったかのー」



「はぁ…」



この話し長いかな……。



「動物が大好きでどうしても獣医になりたいんじゃって言うた若者がここに越して来た次の年、見事に国家試験に合格した言うとったなー。」




「へっへぇ~…」



「んで、その次に入ったのは美容師を目差しとった女の子でなぁ。」



「はぁー…。」



まだ、続く??



「越して来て二年後に夢を叶えたんじゃったかなぁ。」



「へっ…へぇ~!すごいですねぇ!!」



満面の笑みで相槌を打つとお爺さんは益々のって来た。



「んで、次が確か~」



うぅ~…もういいしっ。



「……そうそう!あんたマイクロシティっのジンっていうミュージシャン知ってるかい?」




……えっ。


「ジン……?」



「あの男も少し前までこの部屋に住んどったんじゃ!」



「……。」



知ってる。



知ってるよ。



私はその隣に居たんだもん。



「あの男は特に印象に残ってるんじゃ。」



「え?」



お爺さんはベランダから外を眺め、風に吹かれながら私に背を向けたままジンの話しを続けた。



「あの男が部屋を探しに来た時も、ちょうどわしが担当でなぁ、いい部屋がないかっていうんで今の話しをしたんじゃ。」



「夢が……叶う部屋?」




「そしたら、見もせずにそこにします!…言うてなぁ。どうしても叶えたい夢があるんだとかでなぁ。」



仁が……



そういう得体の知れない話し、信じるタイプじゃないのに……



意外だな。



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