キミのとなり。
女の弱み
翌朝、またいつもの様に廊下で私と仁は顔を合わせた。


一瞬目が合い、気まずい空気が流れる。



すると、仁はスッと目を反らし私の先を歩いてエレベーターに乗った。



廊下で立ち止まったままの私を見て、仁は珍しく声をかけてきた。



「乗らねぇの?」



へっ……!?



「のっ…乗ります。」



スタスタと硬直し切った体でエレベーターに乗り込む。


はぁ~、なんで緊張してんだろ私。


ソワソワと落ち着かない私をよそに、先に口を開いたのは仁だった。



「あんたなんで居たの?」


「へっ?!」



声が裏返った……。



「昨日、居ただろライブハウスに。」



やっ、やっぱ気付いてたんだ……。


超気まずい。



「興味あんの?」



「えっ…まっまぁ……。」


「…ふぅん。」



私、何咄嗟に嘘ついてんの~。



“ガラーッ”



タイミングよく、エレベーターのドアが開いて仁は先に降りた。



はぁーよかった……。



すると、仁は振り返っていきなり私に近寄ってくる。


なッ何々?!



なんか気分損ねるような事言った!?



仁は人差し指を私の顔の前でピンッと立てるとこう言った。


「誰にも言うなよ、俺がここに住んでる事。」



へっ!?



「いいな!」



「はっ……はい。」



一人納得した様子で仁は去って行った。



なっ殴られるかと思った……。



まだ心臓がドキドキしてる。



なんなんだろう、あの威圧感は……。


昨日のあの人物は本当にあいつなのか!?



もしかしてっ……


二重人格!?



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