キミのとなり。
“ガチャッ”



仁が鍵を開けた。



その後に続いて久しぶりに部屋へ足を踏み入れた。



足元に靴が散乱している。


下駄箱の上に乱暴に重ねられた新聞紙の山……



そこはすっかり男の一人暮しの部屋だった。



自分がもうここに住んでいないんだという事を改めて実感した。



仁は靴を脱ぎ、無言のまま中へ進む。



ん……?



私はその時点である異変に気がついた。



あれ?



おかしいな。



違和感を感じつつ奥へ進んだ。



リビングは更に散らかっていて洗い物ももう何日もしていない様子だった。



ソファーの上には脱ぎ散らかされた服の数々……



あれ?



やっぱりおかしい。



ねぇ、タマは?」



仁はヘルメットをソファーに投げた。



“ドサッ”



「……仁?タマっ」



「死んだんだ。」



 ………


 ………



えっ……



「ひと月前に……」



嘘っ……



私は力無く腰からソファーに崩れ落ちた。



「………。」



「俺が仕事から帰ったら……あいつ、一人でここで冷たくなってて。」



やだ…信じられない。



頭のどこかで“ミャー”とタマの甘えた鳴き声がする。



すぐそこにいるように聞こえるのに……。



「ちょうど、お前と別れたあの一週間後だったかな。」



えっ……



私達が別れた一週間後……


想像した。



私がバイバイと手を振ったあの日からタマは毎日一人で仁の帰りを待ち続け……


仁が仕事の間も一人でここにいて



寂しかったんじゃないか…


辛かったんじゃないか……


最後息を引き取る時まで一人だったなんて……。



ごめんね。



ごめんねタマ……





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