キミのとなり。
「ここに眠ってるんだ。」


仁は私に一枚の紙切れを差し出した。



「ペットセメタリー…」



そこにはそう書かれていた。



「ペット専用の墓地なんだ。最後看取ってやれなかったから、ちゃんとしてやりたくて。」



「……ここにタマが。」



「時間があったら墓参りに行ってやってくれ。」



仁は小さな声でそう言った。



私はなんだかそれが寂しかった。



「…そんな他人行儀な言い方やめてよ。」



「え?」



「タマは……タマは仁と私の大事な家族だったのに。」


手に握りしめた紙の上に涙が一粒落ちた。



「時間があったら…なんてそんな言い方しないで。」


「千秋……」



「連れて行って……。」



「え?」




「謝りたいの。今すぐ…」



仁は一瞬驚いた顔で私を見ていた。



「今からか?」



時刻は8時をまわっている。



そんな事わかってた。



だけど居ても立ってもいられなくて、私は初めて仁にわがままを言った。



仁は考え込んだ後、ソファーに投げたヘルメットを手に取り玄関へ向かった。



仁……ありがとう。



外はすっかり雲が晴れ、夜空に星が瞬いている。



もう一度バイクに跨がり、私達は走り出した。


「寒くないか?」



「うん。」



「恐くないか?」



「…平気。」




途中何度も後部座席の私を気遣い、仁は優しい言葉をくれた。



私は広い背中に頬を埋めた。



暖かい……



心臓の音がする。



全然どきどきしてないね。


なんだかとても切なかった。


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