キミのとなり。
バイクで走る事20分――



「ここだ。」



降りたところは真っ暗な闇に包まれた夜の墓地……。


廻りを林に囲まれ、風が吹くと木の葉の揺れる音がする。



こんな寂しい場所にタマは一人で眠ってるんだ。



タマ……



タマ……



今すぐこの手に抱きしめてあげたい。



あの綺麗に毛繕いされた背中を優しく撫でてやりたいのに……。



「こっちだ。」



仁に案内されて、誰もいない夜の墓地を歩いた。



小さな十字架がいくつも並んでいる。



その一角にそれはあった。


仁はその募石の前で足を止めた。



ゆっくり近づく。



目の前に小さな十字架が掲げられていて、足元の募石にはこう刻まれていた。




《TAMA》
《since2001~2007》
《be loved by jin&chiaki》



そこには仁の名前に並んで私の名前があった。



「仁…これ。」



「わりぃ、勝手な事して。でも……どうしても刻んでやりたくて……お前は俺と千秋にちゃんと愛されてたんだぞって、伝えてやりたかったんだ。」



仁は募石を見つめたままそう言った。



《since2001~2007》



タマの命は皮肉にも私達が出会う頃始まり、私達が別れた頃に燃え尽きた。



私達がもっと一緒にいられればまた違っていたのかな。



そんな思いが胸を締め付けた。


「……タマ、ごめんね。」


私はしゃがみ込み“TAMA”と墓石に刻まれた名前を手の平で優しく撫でた。



「本当にありがとう。」



タマが運んで来てくれたんだよ。



私にとって最高の幸せを。


私にとって最愛の人を。



本当に心から……



心から感謝してるよ。



大好きなタマ、



安らかに眠って……。







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