キミのとなり。
仁が、ゆっくり私の横にしゃがみ込む。


「たまに来て、花でも手向けてやってくれ。」



「……うん。」



静かに手を合わせる仁。


私もそっと募石に向かって手を合わせた。



静かな静かな夜の墓地で、私と仁はタマに最後のお別れを言った。



「送ってくよ、どこだ家。」



ヘルメットを被り仁がエンジンをかけながら私に聞いた。



「えっ……」



いいよ!一人で帰れる。



と言える距離じゃないし。


正直ここに一人残されるのも……。



仁は私の答えをバイクに跨がりながら待っていた。



ゆっくりメットを被り、仁の後ろに乗る。


「……で?どこ?」



「……ション。」



「あ?聞こえねーよ。」



「…マッ…ンション…前に住んでた。」



仁は一瞬動きを止める。



しばらく何か考え込んだ様子だった仁がエンジンを吹かしバイクは走り出した。


今、何を思ったの?



バイクは少し肌寒い風の中を走り続けた。



そして着いたマンション。


仁はヘルメット越しにその懐かしい建物を見上げている。



「…ありがとう。」



ゆっくりバイクを降りると、被っていたメットを仁に返した。



「………。」



「………。」



気まずい沈黙が二人を包む。



「……それじゃ、」



無言の仁に背を向けて歩き出した。


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