キミのとなり。
「会おっか。」



《えっ!?》



会いたいと言ってくれた桜井君の気持ちを大切にしたい、そう思っていた。



「今から、会おっ。」



電話の向こうで桜井君は、驚いて言葉を無くしていた。



前へ進まなきゃいけない。


前に……。



《じゃー場所教えて?下に着いたら連絡する。》




――午後11時前



“チャラララ…”



桜井君からのメールを受信した。



《着いたで》



部屋着に着替え、髪を束ねてサンダル履きのまま下へ降りた。



マンションの玄関口を出た所に、見慣れないスポーツカーが止まっている。



私が近づくと、窓がゆっくり開き中から桜井君が顔を出した。



「おまたせ!」



無邪気な笑顔に不思議と安心感を覚えた。



「車持ってたんだね。」



「一応ね。」



車から降りた桜井君は、助手席のドアを開けてこう続けた。



「真夜中のドライブなど、いかがですか?」



「……ふっふふ。」



紳士な桜井君に導かれ、車の助手席に乗り込んだ。



ドアをゆっくり締めると、運転席に戻りハンドルを握る。



「真夜中じゃないしっ。」


「ええねん、細かいことは!!…さぁ、行くで~!」


車はゆっくり走り出した。


煙草をくわえながら煙たそうにハンドルを握る横顔がやけに大人びて見えて、またドキッとした。



仁以外考えられなくて、仁以外の人に恋する事なんてもうないんだって思ってた。



だけど…ちゃんと私の胸は仁以外の人にもときめく気持ちを失っていなかった。



それが、なんだか寂しくて複雑だった。



車窓に写る夜景…



街の明かりが綺麗。



「いいとこ連れていったるわ!」



煙草の火を消しながら桜井君が言った。



「いい所って?」



私がそう聞くと桜井君は横で悪戯なウィンクをして見せた。



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