キミのとなり。
「連絡…取ってないのか?」



弘人は正面を向きながらアイスキャンディーに噛り付く。




「……ん?この間会ったよ。」



「あぁ!?」



口をあんぐりと開け、物凄くびっくりしている。



「あっ…会ったって……じゃーもしかしてっ」



「違うよ~飼ってた猫がね、死んじゃって……お墓参りに行ったの。」



「……で?」



「で……って?」



「話ししたんだろ!?ジンはなんて!?」



「うん、なんで笑えるんだっ…て言われた。」



「……。」



弘人はまた正面に視線をずらした。



「あいつ……ジンさぁ、この前に歌番組に出てて、見てたんだけど途中で歌詞飛んじゃってさ……」



なんだ、弘人も見てたんだ。



「あいつは、あいつなりにダメージ受けてんじゃないのか?」



「……。」



手に持ったアイスキャンディーが溶けて、ぽたぽたと地面に落ちている。



「千秋だって本当はっ…」


「弘人。」



私は弘人のその先に出てくる言葉を聞くのが恐くて、会話を遮った。



「……ん?」



「私ね、桜井君に告白されたの。」



弘人は横で動きを止めた。


「さっ…桜井って…あの?」



「そう、新人の。」



「なんだよっやっぱ千秋の事狙ってたのかよ~…」



「……でね。」



「ちゃんと断ったのか!?あぁいうタイプはハッキリ言っておいた方が後々面倒だそ?」



「……うううん。」



小さく首を振った



「なんだまだ言えてないのか!?わかった、強引に言い寄られて困ってんだろ!よしっ、俺がバシッと…」


立ち上がろうとする弘人の腕を掴んだ。



“ガシッ”



「違うの。」



「……あ?」



無言で俯く私を見た弘人は、再びゆっくりベンチに座る。



「違う…って?」



「……。」



少しの沈黙が流れる。




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