キミのとなり。
仕事が終わって、言われた通り誰もいないオフィスで弘人がやってくるのを待った。


30分ぐらいして仕事を終えた弘人がやってきた。



弘人の顔を見るなり、押さえていた不安が込み上げてきて、思わず駆け寄り抱き着いた。



“ガシッ…”



「……千秋?」


いきなり抱き着かれた弘人は、訳もわからず目を丸くしている。


思わず背中に回した手に力が入った。


あの子にとられそうで、不安で仕方ない……。



子供だよね…本当。



「……どうした?」



聞かないで。


何も聞かないで。



ただ、ここに居て。



「好きよ、弘人。」



そんな言葉が口を突いて出て来た。


「…うん。」



弘人はただ小さくそう言った。



「私の事……好き?」



「……うん。」



なんで『うん』しか言わないの?



なんで、私の背中に手を回そうとしてくれないの?



「弘人、ギュッてして!」


不安で不安で、私消えちゃいそうだよ。



弘人はゆっくり手を伸ばし、私を強く抱きしめてくれた。



「私、早く弘人と結婚がしたい。」



何故か焦ってそんな事を言った。


すると弘人は少し黙った後に、私の後ろに回した手を解いた。



「なんか食べに行こ。」



そして私に背を向けて歩き出す。


なんだかその後ろ姿が・・・


「面倒くせーな」って、言ってるような気がした
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