キミのとなり。
「あっそうだ、今度の日曜デートしない?」



私の突拍子もない発言に目を丸くする桜井君。



「えっ!?」



「映画も見たいしーほら今やってるじゃん、お面被った殺人鬼が出てくる超こわ~いやつ!それから買い物にも付き合って欲しいし~夜はおいしいレストラン予約してさっ。」



きょとんとした顔で目をパチパチさせている。



「どうしたん?」



「えっ?何が?」



「…だってなんか急に積極的やし。」



「何言ってんの!デートぐらいするでしょ普通、恋人だったら。」



「いや、そりゃそうやけっ………」



一瞬動きを止めてもう一度私の顔を確認する。



「えっ、今なんて?」



「言っとくけど私、結構デートプランには口うるさいよ!?」



もう一度目をパチパチさせる。



そしてどうやらそれが私からの“YES”の返事だということをようやく理解する。



「えっ…先輩それって。」


「時間はー…10時にしよっか!ちゃんと時間通りに迎えに来てよね。」



そう言い残してオフィスに戻った。


いいんだ。



これで、いいんだ。



前だけ見て生きてくんだ。


《うおっしゃー!!》



廊下で桜井君が叫ぶ声がする。



まだまだやることなすことガキだけど……


頼りになりそうでならなくて……


いっつもがむしゃらで、無鉄砲で……


だけど、ちゃんと言ってくれたから。


私の目を見て、好きだって、言ってくれたから。


桜井君が言ったように試すわけじゃないけど、自分の足で一歩踏み出したかったんだ。


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