キミのとなり。
私達は、最近できたばかりの大型ショッピングセンターへ向かった。



その頃にはもう自然に彼の手を握る自分がいた。




「あっここ見ていい?」



「うん、いいよ。」



桜井君に引っ張られるようにメンズショップへ入った。


「うわ~このデニム、マジでかっこいい!」



色褪せたデニムを手に取り、子供みたいにはしゃいでいる。



「どうこれ!」



「うん!いいんじゃない!?」



「よしっ買お!」



早っ!



一時の迷いもなくレジに向かった。



本当、こんな普通のデートなんて久しぶり。



こういうごくごく普通の事が出来なかったんだよね、仁とは…。



「先輩!!次どこ行く!?」



「……。」



したかったな……



普通のデート…。



私が「この服似合う?」って言うと、



《面倒臭ぇ…》



って不機嫌になる仁の姿が浮かんでくる。



「……せん、ぱい?」



ハッ…



横からした声に我に帰った。



振り返ると、首を傾げて私を見ている桜井君がいた。


「あっ!…ごめっ。あ、デニム買った!?」



「えっ…あーうん。」



「そっか!よかったね~いいのが見つかって。」



空回り気味の笑顔…



一瞬不穏な空気が流れた。



「あっじゃー次は…」



そう言って歩き出した時、後ろからガシッと手を掴まれた。


驚いて振り返ると、桜井君はまじまじと私の顔を見つめながらこう言った。



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