キミのとなり。
「えっ…わぁっ!」



桜井君は軽々と私をお姫様抱っこした。



「やっ…やめてよ!何やって…っ。下ろして~!!」


バタバタと足を動かして抵抗してみる。



「部屋に入れてくれたってことはぁー…」



「もぉっ下ろして~!」



抵抗も虚しく、そのまま後ろにあったベッドに倒れ込んだ。



“ドンッ”



「きゃっ。」



その勢いに一瞬目を閉じた。



「……。」



恐る恐る片目を開けると、ほんの数十センチの距離に桜井君の顔があった。



「さっさくッさ…」



混乱のあまり舌が絡まる。


「ふふっ…舌回ってへんし。」



半笑いのまま私の髪を撫でた。



「やっ…まっ待って!」



「うん、待ってるよ。」



「やっ…そうじゃなくて!」



桜井君はもちろん私がまだ未経験だなんて思ってもいない様子。



桜井君の胸に手を突っ張り思いっきり押してみたけど、びくともしなかった。



逃げられない状況。



「嫌やったらそう言ってな、無理にとかせーへんし。」



こっ……
ここまでしておいて!?



「まだ早い?」



「あっ…あのっ」



髪を撫でる桜井君の手が止まる。



「……んっ、千秋どしたん?震えてるで。」



目を丸くして私を見ている。



私は目を反らして小さく呟いた。


「……ないの。」



「え?」



「したこと……ない。」



私の口から出た言葉を聞いて、桜井君は動きを止めた。



私は思わず真っ赤になった顔を両手で覆った。



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