キミのとなり。
神聖な空気が漂うチャペルの中は、白を基調とした内壁で床には真っ赤なバージンロードが目を引くように続いている。



私と若菜ちゃんは新郎側の一番後ろの席に付いた。



まだソワソワと参列者を物色している若菜ちゃんをよそに、私はなんだか身が引き締まる思いだった。



好きだった人の結婚式…



こんな感覚は初めてだ。



“それでは、これより神田家と藤堂家のチャペル挙式を執り行います。”



アベマリアの曲に合わせて扉が開き、先に白のタキシードに身を包んだ弘人が入場してきた。



まっすぐ前を見ながら、一歩ずつ力強く歩く弘人。



デジカメの背面にある画面越しにその横顔を見ていた。


なんだかんだあったけど、弘人もついに結婚か。



弘人と付き合っていた時の思い出が頭を過ぎった。



22歳だった弘人。



もうすっかり大人の男になったんだよね。



おめでとう!



“パシャッ”



その凛々しい背中に、そう投げ掛けた。


“新婦が入場致しますので、後ろの扉にご注目ください。”



神父がそう言うと、ゆっくり後ろへ視線を移す。



開いた扉の中から父親と腕を組んだ新婦、あづささんが入場してきた。



ケープ越しに見えた新婦の横顔は、会場から溜息が生まれる程綺麗で、ただまっすぐに弘人だけを見ていた。


父親から弘人へ、新婦は腕を組み替える。



何度見ても、じんとくる場面…。



二人は一歩一歩階段を上り、神父の前で一礼した。



誓いの言葉…



指輪交換…そして誓いのキス。



私達の目の前で弘人とあづささんは夫婦になった。



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