キミのとなり。
はぁー…



勘弁してよぉ。



なんでこんなめでたい席で延々愚痴聞かなきゃなんないのよっ。



トイレの鏡の前で、大きく深呼吸をした。



“ブッーブッーブッー…”



ん?



鞄の中で携帯が鳴った。



慌てて確認すると、桜井君からだった。



《式、何時に終わる?休みで暇してるし迎えに行くわ!》



えっ…迎えに!?



とっとんでもない。



若菜ちゃんに何言われるかわかったもんじゃないよ!


“ピッピ…”



《いいよ!電車で帰るから。今日はゆっくりして!》



――送信っと。




“ブーッブーッ…”



《遠慮せんでもいいって!それぐらいできるから!》



遠慮じゃなーい!!



《本当にいいから!もう式始まるからまた帰ったらメールするね!》



――送信。



はぁ~、なんで私、こんなに後輩に気遣ってんだろ。


鏡で軽く髪をセットし直しトイレを出た。



“ガチャン”



 ………ん?



その時、一瞬私の視線が廊下のずっと先にある何かをとらえた。



背中に背負われた、見た事あるギター…



その背中は廊下の角を曲がって去って行った。




やっ……まさか。



馬鹿だな私、こんな所にいるわけないのに……。



なんで考えちゃうんだろう。


「せんぱーい!!」



反対側から若菜ちゃんが走ってくるのが見えた。



「いつまでトイレ入ってんですか!!始まりますよ!?」



「あっごめんごめん!」



若菜ちゃんに手を引っ張られて会場へ戻った。



似てたけど、……



気のせいだよね。


私ついに、幻覚まで見るようになっちゃったのかな……。



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