キミのとなり。
“ジャジャーン…♪”



…―曲が終わった。



“パチパチパチ…”



“キャーー!!”



また会場に大歓声が沸き起こる。



会場に居合わせた女性達はカメラ片手に立ち上がり、仁の前に群がり始めた。



《キャー!ジーン!》



仁はスタンドマイクに手を掛けて、まっすぐ前にいる二人を見て話し出した。



『えーっ本日はおめでとうございます……』



久しぶりに聞く落ち着きのある声に、キュンっとなる。


『えっと、……』



仁は言葉を詰まらせ下を向いた。



『突然の事に驚いたかと思いますが、どうして俺たちがここに立ってお二人に歌をプレゼントしたのかと言うと……』



仁……。



『実は、ある人に頼まれたからなんだ。』



えっ―…



《ザワザワザワ…》



仁の突拍子もない発言に会場はどよめいた。



「せっ先輩……それって。」


若菜ちゃんが隣で放心状態の私の顔を覗き込む。



仁…どうして。



心臓が爆発しそうだった。



『お二人は、その人の大切な人で……その人が二人を祝ってあげて欲しいと前に俺に頼んだ事があって。』



『正直、今唄った歌は結婚式には相応しくない歌だとは思ったんだけど……実は、俺が初めて彼女にプレゼントした曲なんです。』




涙で視界が曇り出した。



信じられない光景だった。


プライドの高い仁が……



こんな事するなんて。



どうして―…




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