キミのとなり。
《ニャァオ…》


んっ?!なんだ…?


私の頬に走るその不思議な感触にまだ重いまぶたをこじ開けた。


「うわっ!」


テーブルに眠り込んでいた私の頬を子猫が必死に舐めていた。


あっ…そっか。


寝ちゃってたんだ、私。


知らない内に朝を迎え、子猫はお腹が空いたのか潤んだ瞳で私を見て鳴いている。


「あっ!帰って来たかなあいつ。」


私は子猫を抱いて隣りを訪ねた。


“ピンポーン…”



しばらく待っていたけど、あいつは出てこなかった。


どうしよう……


帰ってこなかったのかな。


それとも、もう出掛けちゃったのかな……。


そうだっ!


部屋に戻ってある事を思い付いた。


「すぐ帰るから待っててね!」


今日は仕事も休みだし、あのライブハウスに行ってみよう!


子猫にミルクを与えると、そのまま子猫を置いて家を出た。


ライブハウスには、やっぱり若い女の子達が今日もわんさか集まっている。


人込みを押し退けて、熱気ムンムンの店内を探しまわった。


だけど、そこにあいつがいる様子はない。


参ったなぁ、どこにいるんだろう……。


宛もなくうろうろしていると、数人の女の子達が話しているのが聞こえた。



「さっきジンが控え室に入ってくの見ちゃった!」



「えーあたしも真近で見たいな~。」


……控え室?


そこにあいつがいるらしい。


どこにあるんだろ。


更にうろうろと歩き回っている内に、私は店の奥に迷い込んでしまった。



すると『関係者以外立入禁止』と書かれた部屋を見つけた。


どっどうしよう。


思わず伸ばした手を止めた。


ここにあいつ、いるのかな。


何て言おう……。


ノックしようかどうか迷っていると、急に背後から呼び止められた。



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