キミのとなり。
「弘人っ…」



「途中で抜け出すなんて、マナー違反もいいとこだぜ。」



「あっ……ごめっ。」



弘人は、赤面する私の横にゆっくり腰を下ろした。



「驚いたな。まさか、本当に来てくれると思わなかったよ…仁が言ってたある人って千秋の事だろ?」



「……私は、何も。」




「でも……びっくりだな。仁があんな事言うなんて。」



「私もびっくりして、心臓止まるかと思った……」



弘人はゆっくりこちらに目をやる。




「仁は、本気で好きだったんだな。……お前の事。」


「……。」



嬉しかった……



すごく、嬉しかった。



なのに―…



素直に喜べない自分がいる。



「さっき飛び出したのは、仁を追い掛けたんだよな?」


私は視線を足元に戻し、小さく頷いた。



「話せたのか?」



「少しだけ。」



「仁は…なんて?」



「何も。たまたまスケジュール空いてたから来ただけだって。」



「そっか。」



弘人はふと、私の手元に注目した。



「それは?」



「あっ…ケンっ、バンドのメンバーがくれたの。仁との事、よく知ってる人でね、話したい事があるからって……。」



「……するのか?電話。」



「……。」



小さく開いた紙を持つ手が震えた。



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