キミのとなり。
夢を見ていた…



仁がいて、その横に私がいて……



仁の膝の上には毛繕いをするタマがいて…



仁は優しい眼差しでタマを撫でていた。



私の一番好きだった光景…


それを横で眺めていたら、急に目の前が真っ暗になって……



必死に手探りで仁を探したけど、そこに仁は居なくて……



海底のように真っ暗で音のない世界をただ一人でさ迷い続けた……



《仁…》



《仁っ…》



《行かないで…》



「ジンッ」



“キィィッ!!”



“ハッ…”



急ブレーキに思わず目を覚ました。



「あっごめん、起こして。信号赤やったの気付かんかった…」



「びっくりしたぁ…」



あれっ、私今、仁って…。


慌てて隣を見る。



「…あっもうすぐ着くで」


そこには、変わらない笑顔の桜井君がいた。



「…うん。」



私はまだ夢と現実の間にいた。



必死に仁を呼ぶ自分の声が頭から離れない。



あれが、本音……なのかな。



数分後――



車はマンションの下に着いた。



「ありがとう……」



疲れ切った声でそう微笑んだ。



「……。」



桜井君は何故か無言になった。



「桜井……君?」



「…んっ!?」



我に返ったように微笑むけど、なんだかすごく切なそうな顔に見えた。



「じゃーまた明日ね。」



気にはなったんだけど、自分を取り繕うので精一杯で車から降りようとドアに手をかけた。



“ギュッ…”



私の右腕を桜井君の温かい手がぐっと掴んだ。



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