キミのとなり。
「あっ先輩!!」



力無くオフィスのドアに手をかけた時、背後から誰かに呼び止められた。



「…桜井君。」



「どないしたん!?こんなに遅刻するなんて珍しいやん!」



「うん…ちょっと。…あっ、体調悪くてさ…、」



咄嗟に私がそう言うと、桜井君は私の額に手を伸ばした。



「熱あるんか!?」



「……えっや…。」



「ん~熱はないみたいやけど、顔色悪いな。」



数センチの距離から桜井君が私の顔を覗き込む。



私の顔は赤らんだ。



「よしっ、俺が部長に話しつけたるわ!」



そう言って私の手を引っ張っりオフィスに入った。



えっ…



話しつけるって…、喧嘩じゃないんだから。



ズンズンなりふり構わず私を引っ張り、部長のデスクの前で立ち止まる。



部長がただならぬ空気を感じ、ずれた眼鏡から上を見上げた。



「ん?…なんだ?……あっ小原、お前今何時だと思っ…」



「小原さん、体調悪くて医務室で休んでたみたいなんっすよ!」



えっ…



桜井君は私の手を握ったままそう言った。



「え?そうなのか?」



部長が私の顔を覗き込む。


「えっあ……。」



「なんかインフルエンザみたいで、吐き気もするらしくて……あっついでにめまいも!!」



つ…ついでに!?



「イッインフルエンザ!?この時期にか!?」



「……あっの~その。あっ、そう!なんか妹が海外旅行でもらってきたやつがなんかうつったとかで…」



私の横で、大きなジェスチャーをしながら必死に言い訳を続ける桜井君。



自分で言いながらしどろもどろだし…



「なんか、特殊な型らしくてー感染力が相当強いみたいなんで特効薬もないとかで!!あっだから今日は早退させた方が……」



もー言ってること無茶苦茶だしっ!


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