キミのとなり。
目を背ける私とは反対に、ただ真っ直ぐ私を見ている。



その表情が優し過ぎて、益々私の胸を締め付けた。



「言えないよ……」



「……え?」



「いっぱいひどいことしたのに……呼べないよ。」



腫れた目からまた涙が出てくる。



「先輩……」



“バッ”



急に桜井君が立ち上がった。



背を向けてググッと伸びをする。



そして、ズボンのポケットに両手を突っ込むといたずらな笑顔をしてこう言った。



「じゃー別れへんで?いいのかな~俺ストーカー並に付きまとうかもしらんで!?」



「え……」



「俺って結構諦め悪いしー、あっ!会社でも席、前やし毎日話しかけてくるかもしらんで!?」



桜井君…



空元気……



わざと強がったりして…



なんだか昔の自分を見てるみたいだった。



ゆっくりベッド脇に座り込む。



「……言って。」



「でも……」



「お願いっ!」



パチンッと手を合わせて、かわいい上目を使いをする。


ここまでしてくれる。



プライドズタズタのはずなのに、



最後の最後まで、私の事を考えて



ここまで折れてくれる。



そんな彼の優しさを無駄にしちゃいけない。



私は涙を拭いて彼を見つめて呼んだ。


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