キミのとなり。
―午後10時



「……よかったよ、本音が聞けて。俺もなんか協力できる事あったらするから何でも言って!」



バーを出た所で、タクシーを止めてケンチャンがそう言った。



「あ~あとっ、マスコミに何か聞かれたら黙ってた方がいいよ、あることないこと書かれるとややこしいから!」



「……あっうん。」




「もし、何か困った事があったらいつでも電話しておいでね!」



「うん、ありがとう。」



ケンチャンはまた帽子を深く被り、タクシーの後部座席のドアを開いてくれた。



「……じゃーまたね!」



「うん…」



笑顔のケンチャンに見送られタクシーに乗り込んだ。


「閉めるよ。」



「ケンチャンっ…!」



閉まりかけたドアの中から私はケンチャンを呼んだ。


「ん!?」



驚いたケンチャンが手を止めて中を覗き込む。



「あっ……あのさ、」



「どした?」



そう、今日会って一番伝えたかった事を言わないと。


ケンチャンは首を傾げている。



「あの……私も素直になるから、……ケンチャンも、……」



「え?」



「ケンチャンも、自分の気持ち押し殺すような事だけはしないって約束して!?」



私の突然の言葉にケンチャンは目を丸くする。



「……千秋ちゃん。」



お願い…



約束して……



涙目でそう訴えた。




「うん、わかった。」



ケンチャンはすべてを察したように、優しくそう言うと手を振りドアを締めた。



どんどんケンチャンが小さくなって行く。



よかった…



少しは私も役に立てたのかな。



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