キミのとなり。
夜10時過ぎ――


家のチャイムが鳴った。


“ピンポーン”


たぶんあいつだ。



「ほらおいで、ご主人様のお帰りだよ。」



私は子猫を胸に抱き上げ、玄関のドアを開けた。


“ガチャッ”


ドアの前に無愛想なあいつが立っている。


「悪かったな世話かけて。」


なんでちょっと不機嫌なのよっ!


「べっ別に、いい…です。」


私は子猫を仁に押し付け、さっきの恥ずかしさを隠す余り、やたら無愛想な返事になった。


仁は子猫を受け取るとフッとまた鼻で息を抜くように笑った。


なっ


なによ!?



その笑い方ムカつく~!


「なっなんなんですか!」


「あんたも忙しいね、いきなり親しげになったり急に他人行儀になったり……。」


「……。」


返す言葉もなく、段々恥ずかしさと怒りで私の顔は真っ赤になった。


「あっこれ、世話になったお礼……」


へっ……?


すると、仁は手に持った紙袋を私に渡すとさっさと部屋へ帰って行った。



なんだ……


意外と常識あるじゃん。


テーブルの上で紙袋を開けてみた。


中に入っていたのは『イチゴのタルト』だった。



「……ぷっ。」


あいつがイチゴのタルトを注文している姿を想像したら、なんともミスマッチでやたら笑えた。


< 43 / 554 >

この作品をシェア

pagetop