キミのとなり。
部屋に入ってすぐ、辺りをジロジロと見渡している仁。



「住人が違うとここまで変わるもんだな。」



「…あぁ、仁の部屋だった時は殺風景だったもんね。」



荷物を置いてキッチンに立った。



仁はポケットから携帯を取り出すとテーブルに置いて、後ろのソファーに腰掛けた。



ここから立って見ていると、一緒に住んでいた時の事が鮮明に蘇ってくる。



私の視線の先にはいつも仁のくたびれた姿があって、それをただ見ているのが好きだった。



不思議だな……



なんでもないこの光景にさえ、涙が出そうになるよ。


気を取り直して、コーヒーを入れた。



「どうぞ。」



「おぉ、悪いな。」



自然と仁の真横に腰掛けた。


肌と肌が触れるか触れないかぐらいの距離に仁がいる。



温かいコーヒーと温かい仁の温もり……



いつの間にか緊張感が解け、安らぎを感じていた。



「あれ、気にすんなよ。」


突然仁が口を開いた。



「え?」



「式で言った事。……俺がそのっ…まだ変わってないって言った事……。」



「あっ……あぁ。」



現実に引き戻されるように手に持ったカップを置いた。



< 433 / 554 >

この作品をシェア

pagetop