キミのとなり。
「週刊誌に書かれてたような事は、ないから。」



「え?」



「別に、お前に未練があって戻ってきてほしいとか…気持ちを伝えたいとか、そういうつもりで言ったんじゃねーから。」



「え……」



仁は飲み終えたカップをテーブルに置くと、両手を足の間で組んでこう言った。



「……ただケジメつけたかっただけだから。」




「ケジメ?」



「自分にケジメ、つけたかっただけだ。前に進む為にな…。」



また例えようのない痛みが胸を襲った。



仁の横顔が切なくて……



その頬に思わず手を伸ばしていた。



「……っ!」



突然頬に走る手の感触に驚いて、仁は私に目を向ける。


「嘘……つき。」



私の口が勝手にそんな事を話していた。



「あ?」



「……未練、ないの?」



“何言ってんの!?”



どこかにいる冷静な自分がそう叫んだ。



だけど、まるでなにかにとり憑かれたみたいに私の口は勝手にしゃべり続ける。



仁は困惑した顔で私を見ていた。



「どうしたんだ?」



私は仁の腕に手を絡めた。


「もう……私に、未練ないの?」



「……。」



絡めた腕に顔を寄せた。



「私の事……もう好きじゃないの?」



「おい、なんかあったのか?」



「……私を抱きたいと思う?」



必死に腕に絡まる手を解こうとしていた仁の動きが止まる。



「お前……男となんかあったのか?」



眉間にしわを寄せながら仁が言った。



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