キミのとなり。
男…


仁の口からそんな言葉聞きたくない。



「…私は、仁のものだよ?仁だけのものだよ?」



「あぁ?」



「私、別れたの彼と…」



見えなかった。



どこに居たって……



誰と居たって……



何をしていたって……



仁しか、見えなかった。



絡めた腕にぐっと力を込めた。



「仁と居たい。」



その腕に頬を擦り寄せて続ける。



「……抱いてよ、仁。」



怖いぐらい押さえ込んでいた気持ちが後から後から吹き出すみたいに、私はその感情に身を任せた。



仁は何も言わず、身動きすらしない。



どんな表情をしているのか、顔を見上げるのさえ恐かった。



でも、気持ちを押さえ切れなくて……



ぎゅっと抱きしめてほしい


キスしてほしい



抱いて……欲しい。



そんな当たり前の感情をぶつけた。

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