キミのとなり。
「千秋……」



離さない。



「もう、先の事を考えて臆病になるのは嫌なんだ。」



わがままになるよ…



私には、仁といる今が一番大切なんだ。



“ギュッ”



温かい、逞しい仁の手の平が私の手を包んだ。



「…やめよう。」



えっ―…



そして、必死に仁の腕にしがみつく私の手を解いた。


「仁っ…」



何が起こったかわからなくて、仁の顔を見上げた。



仁はとてつもなく寂しそうな表情をしていた。



「……今の俺にお前は抱けない。」



「仁……」



「俺がお前を抱くのは、周り全てが俺達を認めてくれた時だ。」



仁―…




「それぐらい重い事なんだ、お前を抱くって事は。」


涙に曇って、愛しい仁の顔が見えなくなった…



愛を感じた。



そうだよね、今回の記事の事できっと事務所も黙ってはいないはず……



私も桜井君と別れてすぐだし、若菜ちゃんやケンチャンの事を考えると



そんな軽々しい行動、



とれるわけないよね。




仁はポロポロと涙を流す私の頭をポンポンッと二回叩くと、スッと私の体を自分の方へ引き寄せた。



押し付けられた仁の胸から心臓の音がする。



ドクドクドク…と、激しく脈打っている。



その音で微かにしか聞こえない仁の言葉に耳を傾けた。



「なんで俺……」




「お前じゃないと」



「……ダメなんだろな。」


え―…



「説明つかねーよ、こんな気持ち。」



仁……。



思わず背中に手を回して、力いっぱい抱き着いた。



私も同じだよ…



みんなきっとそうなんだ。


好きとか、愛しているという気持ちに……




説明なんかつかない。




理屈じゃなく、



それが、愛なんだ。

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